愛犬が嘔吐!?症状や状況から危急性まで解説!
突然犬が吐いたら飼い主さんは心配ですよね。
ですが犬は健康管理の基本として「吐く」という行為をなにかとする動物です。
ここで勘違いをしてしまう人も多くいますが、犬の「吐く(吐き出し)」という行為と「嘔吐」は似て非なるものです。
日常的な犬の吐き出しから病気の嘔吐までいろいろな観点から判断し、原因や危険度をしっかりと見極めなければ適切な対処ができません。
この記事では、犬が嘔吐する原因や、嘔吐物の色でわかる危急性、また嘔吐した時の対処方法を詳しく説明しています。
嘔吐の症状の他にも症状が出ていたら、病気の可能性もあるかもしれません。
誤った対処を取らないためにもしっかり学んでいきましょう。
原因
消化器系の疾患
まず犬が嘔吐したら消化器系の疾患を疑いましょう。
一口に消化器疾患といても数多くの種類があります。それぞれの疾患と原因を詳しく見ていきましょう。
- 急性胃腸炎:有毒植物を食べた、寄生虫の感染、ストレス、食物アレルギーなど
- 大腸炎:寄生虫、腫瘍またはポリープ、フードが変わった、アレルギー、誤飲など
- 便秘:便秘の原因は複数ありますが、運動不足、水が足りていない、消化に悪いものを食べたなど
- 下痢:感染症、寄生虫、ストレス、フードが変わった、腐ったものを食べたなど
- 膵炎:多くの場合は原因不明ですが、可能性としては脂肪やカロリーの高い人間の食べ物を与えたことなど
消化器疾患であれば嘔吐以外の症状として一般的な兆候は、軟便や下痢です。
他には、食欲の変化、血液や粘液が混じった便、体重減少、腹痛などです。
消化器官系の疾患ならば、食べ物の消化や吸収を妨げる、食べ物の消化管の通過に影響を与えるなどの症状が生じるため、排泄物や体重に変化が表れます。
嘔吐の他にもこれらの症状が出ている場合にはすぐに対処する必要があります。
胃腸疾患であれば、嘔吐した時に脱水症状や栄養不良を引き起こす場合があるため、すぐに動物病院へ連れて行くようにしましょう。
他の臓器の病気
消化器疾患以外の全身の疾患や臓器の病気が原因の場合にもさまざまな疾患があげられます。
ほんの一部ですが、その疾患と原因を見ていきましょう。
- 腎不全:細菌やウイルスの感染による腎炎や、外傷、または薬物による中毒など
- 肝炎:アデノウイルスI型、レプトスピラなどの細菌、その他寄生虫、真菌などの感染など
- 緑内障:外傷や眼内の炎症に由来するもの、中毒、栄養不良、ホルモンの病気、糖尿病など
- 腫瘍:腫瘍ができる部位により原因はさまざま
- 熱中症:気温の高い場所、過度な運動など
これらの疾患があげられます。
一見、「緑内障は目の病気なのに嘔吐するの?」と不思議に思うかもしれませんが、緑内障の場合頭痛により嘔吐してしまうケースもあるのです。
症状が嘔吐だけなら緑内障と見分けることは素人にはとても出来ませんよね。
こういったケースもあるため、愛犬が嘔吐していたらやはりすぐにでも動物病院へ連れて行くようにしましょう。
また、嘔吐の原因が熱中症の場合であれば、嘔吐をしてしまうということはだいぶ症状が深刻化しているということです。
熱中症の初期症状は、息が荒くなるなどですが、嘔吐や痙攣などの症状が出ている場合には、水を浸したタオルで冷やすなどしてすぐに体温を下げるための応急処置が必要となります。
その他
異物の誤飲
原因の食べ物を食べてしまった、おもちゃなどを誤飲してしまった場合にも嘔吐します。
はじめに書いたように犬の「吐き出し」という行為と「嘔吐」という行為は似て非なるものです。
吐き出しは、犬が食べたものを口から吐き出すことで、よく起こることです。
これを嘔吐だと思ってしまう飼い主さんも多くいますが、犬が吐いたものを見ると、食べ物がある程度消化されている場合と、全く消化されていない場合があります。
つまり犬の吐瀉物で、それは吐き出しなのか、嘔吐なのかを見分けるのです。
吐き出しの場合は、食べた物が消化されていません。
一方、嘔吐の場合はある程度食べたものが消化されているのです。
愛犬が異物を誤飲してしまった時にもこれらの違いで、吐き出しなのか嘔吐なのかを見分けることができます。
もし、そのため犬が嘔吐したらオロオロしてしまうかもしれませんが、しっかりと吐瀉物を確認しましょう。
人間の食べ物が混じっていて、ある程度消化している場合にはそれは嘔吐です。
なにか中毒を起こしている危険性もあります。
一方、吐瀉物の中に全く消化されていない人間の食べ物があればそれは吐き出しです。
愛犬が元気にしているようであれば、あまり心配がいらないことが多いです。
食べ過ぎ
犬の場合食べすぎて嘔吐するというケースも多くあります。
食欲旺盛な育ちざかりの犬がフードをガツガツ食べて、食後にすぐに吐きだしてしまうというケースが多々あるようです。
犬は吐いたあとでも元気な様子で、さらに吐き出した物を食べてしまうこともあります。
こういった場合には、すぐに病院へというほど慌てる必要はありません。
愛犬が元気で普段通りに過ごしているのであれば様子を見るようにしましょう。
ですが、必ず犬が吐き出した吐瀉物は確認しておく必要があります。
もしかしたら人間の食べ物などが混じっていたり、血液が混じっていることがあるかもしれません。
また、食べすぎてフードを吐いている場合、吐瀉物以外にも吐いた回数が1回なのか複数なのか、吐いたあとの犬の様子、吐いたのは食後何分後なのか、下痢をしていないかなどを確認するようにしましょう。
複数回吐き出しているのでればそれは異常がある証拠です。
いつものような食べすぎで吐いているのではなく、消化器系や全身疾患、またはその他の疾患があるのかもしれません。
吐き出した回数、タイミングなども見逃してはいけないのです。
車酔い
愛犬を車に乗せて出かけている時、いつもよりもヨダレが多い、あくびが多い、落ち着きがないなど感じたことはありませんか?
中には嘔吐してしまう犬もあり、このような症状は「車酔い」である可能性があります。
犬も人間と同じ用に三半規管や前庭で体の位置情報を感知しています。
ですが車による揺れが過度に起きると、三半規管や前庭で得た情報と視覚で感知した情報にずれが生じてしまうのです。
そして平衡感覚が保てなくなり、車酔いの症状が出ます。
フードを変えた
フードを突然変えると、胃腸トラブルを起こすことが多々あります。
急にフードを変えてしまうと犬のお腹がびっくりしてしまい吐き出してしまったり、時には下痢をしてしまうこともあります。
新しいドッグフードに切り替える場合には、今まで使用していたフードに新しいフードを徐々に混ぜ合わせていくようにしましょう。
1週間ほどかけてゆっくりと新しいフードの比率を増やしていきフードを切り替えます。
フードを切り替えた時には上記のようなびっくりしたという原因以外にも、新しいフードの油分が愛犬の体に合わない、アレルギー症状を起こしている可能性もあります。
フードを変えた途端に愛犬が吐き出しや嘔吐をしていた場合にも、必ず吐瀉物を確認するようにしましょう。
吐き出しの場合であれば、吐き出したフードをまた食べることもありますが、嘔吐の場合には吐瀉物を食べようとはしません。
吐き出しであれば心配はいりませんが、嘔吐している場合には変えたフードが愛犬になにかしらの悪影響を及ぼしている可能性があるかもしれません。
このようなこともあるため、フードを切り替える時は一度に切り替えるのではなく1週間ほど時間をかけて切り替えるようにしましょう。
アレルギー
人間と同様に犬も食べ物に対してアレルギーを持っています。
アレルギーを持っている場合は、すぐに吐いてしまうこともあるため、気をつけて見るようにしましょう。
もし、食物アレルギーの原因であるアレルゲンが特定できれば、それらの食材は今後使用しないようにしましょう。
いつも食べているドッグフードでアレルギーを起こしてしまう場合には、フードを変えてみたり、グレインフリーの物に切り替えると良いでしょう。
犬の食物アレルギーの代表として「小麦アレルギー」があげられます。
小麦を多く使用しているドッグフードですと、こういったアレルギーが出てしまい、食べたものをすぐに吐き出してしまうため、小麦を使用していない「グレインフリーフード」がおすすめです。
アレルギーが原因で食べたものを吐き出している場合には、他にも下痢、軟便、皮膚炎、外耳炎などの症状が出ることがあります。
心配な場合は、すぐに動物病院へ連れていき、診察を受けるようにしましょう。
老化
老化で消化器が弱っている場合は、高カロリーなフードを吐き出してしまうことがあります。
人間もそうですが、寝起きにいきなりジャンクフードを食べたりするのは抵抗がありますし、昔は大丈夫だった脂っこいものを食べると胃もたれするなんて経験はありませんか?
また病み上がりの時期には消化の良い食べ物を食べたりしますよね。
それと同様に犬も年齢に合わせたフードを与える必要があります。
子犬の時期、成長期、老齢期に必要となる栄養素は異なるのです。
特にシニア犬の場合には、今まで食べていたドッグフードを急に食べなくなる、食べても吐き出してしまうということはよくあることのようです。
そもそも年をとれば活動量が減り、消化機能が衰えたり、基礎代謝力も低下してきます。
また年齢とともに好みが徐々に変わるということも考えられます、
シニア犬には良質な動物性のタンパク質を適量、そして低カロリーとミネラルバランスを意識した食事へと変えるようにしましょう。
特に消化の良いものを選ぶといいでしょう。
また、胃腸の機能を高めるためにサプリメントなどを併用する、フードは何種類かをブレンドして与えるなどするのも1つの方法です。
メンタル
犬はストレスが溜まっている時期にはよく吐いてしまうことがあるようです。
例えば、不安や恐怖も嘔吐する原因となることがあるのです。
を多頭飼育している場合、別の犬と食事を争っていることはありませんか?
こうした縄張り意識が早食いの原因を招き、その結果胃に過剰な負担をかけてしまったり、食べ物を正常に飲み込むために必要な唾液の分泌量が少なくなったりします。
そして、吐き気を催し胃酸の分泌量も増えてしまうのです。
また、1頭で飼育していた場合でも犬の生活環境が悪い、飼い主さんに強く叱られたなどのストレスから食べたものを吐き出してしまうこともあるのです。
こういった場合は前後の行動を見てすぐに原因が分かる場合もあれば、長く蓄積されたストレスがついに肉体的にも影響を及ぼしている場合とさまざまなケースがあります。
動物病院での健康診断に問題がない、急にフードを切り替えたわけでもない、老化でもないなど原因が分からない場合に疑われるのがメンタルヘルスです。
メンタルが原因で体調の影響を及ぼしている場合には、他にもいろいろな場所で排泄をしてしまったり、今まで遊んでいたおもちゃには見向きもしなくなった、寝てばかりいるなどの症状もでます。
なにも原因が思いつかない場合には愛犬のメンタルヘルスの方向から考えてみると、解決の糸口が見えるかもしれません。
嘔吐物の色でわかる危急性
犬が吐き出した時には吐瀉物をしっかり確認するように述べましたが、ほとんど食べたものが消化されていた吐瀉物の中に色が混じっている場合もあります。
黄色だったり、白(唾液)だったり、血が混じって赤だったり、茶色だったりすることがあります。
この吐瀉物に混じっている色でどこが悪いのか、なにが原因で嘔吐しているのかを判断することもできます。
それでは吐瀉物に混じった色別に原因を詳しく見ていきましょう。
黄色・白
逆流性胃炎
吐瀉物の中に黄色や白い唾液が混ざっている場合は逆流性胃炎の可能性が考えられます。
黄色く色づいたものは胆汁と言われる液体で、ツンとして刺激臭があります。
胆汁は肝臓で作られており、肝細胞の毛細胆管へ分泌され、十二指腸へと排出される消化液です。
白い唾液は、胃液です。胃液は体内の中であれば無色透明の液体ですが、吐いた時には白くあわだっていることがあります。
逆流性胃炎とは、胃の中で胃液と混ざりあった食べ物や、異物や、胃液そのものが食道へ逆流してしまう病気です。
胃液は強い酸性のため、逆流してしまうと胃や食道の粘膜を刺激して、粘膜がただれたり、潰瘍ができたりと炎症を起こします。
逆流性胃炎の原因は、便秘や、フードを切り替えて消化不良を起こしている、感染症、熱損傷、刺激のある物質を食べて食道に滞留した異物あなどの原因によって起こります。
嘔吐以外の症状は、ヨダレが多い、食欲がない、咳をしている、体重が減った、脱水を起こしているなどがあげられます。
軽度の症状であれば炎症を抑えるお薬を投与、消化に良い流動食を小分けで与えて様子を見るようですが、症状が重度であれば、食道を休めるために胃の中へチューブを挿入したりと入院が必要となる場合もあります。
血が混じっている
胃のびらん
吐瀉物に血が混じっている場合は病気の可能性が高いです。
胃のびらんとは、粘膜防御の障害が原因でびらん性胃炎を引き起こしていることで胃潰瘍の一歩手前です。
胃潰瘍の場合は、胃壁がさまざまな原因により傷つけられ、えぐられた状態のことで、傷が粘膜下層より深くなっています。
ですが、びらん性胃炎の場合には粘膜下層に達していない状態のことを言います。
人間の場合は、ストレスやヘリコバクター・ピロリ菌という細菌の感染が原因となり引き起こされる病気ですが、犬の場合は、これらのことが直接的な原因となっているのかはまだはっきりと分かっていないのです。
ですが、多くの原因としてあげられるのは薬の服用に伴うもの、つまり副作用です
痛み止めや抗炎症薬の中には胃の粘膜を保護する力を抑えてしまう作用を持つ薬があり、これらを長期に渡って服用した場合にびらん性胃炎や胃潰瘍が引き起こされることがあります。
主な症状として、食欲がない、元気がない、黒色の血便が出るといった症状があげられます。
血の混じった吐瀉物が出ますが、血のように赤い色ではなく、コーヒーのように茶色い吐瀉物が出ます。
びらん性胃炎の場合、傷が粘膜下層まで達していないため胃酸の分泌を抑えるお薬や、胃の粘膜を保護するお薬でほとんどの場合良くなります。
胃潰瘍
胃潰瘍は上記で説明したびらん性胃炎が進行して、傷が粘膜下層より深くなっている状態のことです。
原因も上記と同じように直接的な原因ははっきりとはわかっていませんが、薬による副作用が原因であることが多いようです。
さまざまな病気にも使用される、コルチコステロイドと非ステロイド性抗炎症剤が主な原因です。
他にはストレスやアレルギーによって胃潰瘍を起こすこともあります。
ストレスの場合で胃潰瘍が起こっている場合には、他にも散歩に行きたがらない、粗相をしたり無駄吠えをしたりと問題行動が多くなったなど犬がサインを出すこともあります。
そして症状は、食欲がない、元気がない、体重が減る、黒色の血便が出るなどがあげられます。
どうして黒い便が出るのかと言うと、胃や十二指腸を通過した血液によって黒く変色するからです。
吐瀉物の中には新鮮な血液や古い血液が混ざっていることがあります。
赤い鮮血は出血が新しいもので古い血液はコーヒーのように茶色いものです。
胃潰瘍の場合、原因となった疾患の特定に至った場合にはまずその治療を行います。
例えばお薬の副作用が原因の場合には、一時的にそのお薬を中断して別のお薬に切り替えたりします。
胃潰瘍がひどくなると大量の出血があります。もし重度の貧血が起きている場合には輸血を必要とすることもある怖い病気です。
腫瘍
犬は腫瘍が原因で嘔吐する場合もあります。
腫瘍は犬が亡くなる最大の原因とも言われており、できる部位によって症状は異なりますが腫瘍が原因で嘔吐する場合には、主に消化器官の腫瘍が考えられます。
胃、胃腸、膵蔵、大腸、小腸、食道など消化に関する器官に腫瘍がある状態です。
そもそも犬の消化プロセスは、まず口に入れて飲み込んだものが食道から胃へ、その後胃から小腸へ、そして大腸へ行き、最後に直腸へ進み排泄物となります。
この口から入れて排泄するまでの過程に腫瘍があれば、できる場所によって嘔吐という症状がでます。
主に嘔吐の症状が出る腫瘍は、胃腸管にできることが多いと言われています。
腫瘍とは、体の細胞が異常に増殖している状態で、良性なのか悪性なのかの判断は見た目ではできないため検査をして判断します。
悪性腫瘍の場合には転移したり、大きくなりすぎて切除しきれないなど治療することすら難しい状態となってしまうため早めに動物病院へ行き診察を受ける必要があります。
他の症状を伴う嘔吐
愛犬が嘔吐した場合に、もし他の症状が出ていたら注意が必要です。
吐き出しの多い犬であれば、いつものことかもと見落としてしまうこともあるかもしれませんが、他の症状が出ていないかなど愛犬の健康チェックをしっかり確認する必要があります。
もし、嘔吐の他に下痢や咳、発熱、たくさん水を飲むなどの症状が伴っていた場合は、病気による嘔吐の可能性が高いのです。
では「嘔吐」の症状が伴う病気を詳しく見ていきましょう。
下痢・血便
胃腸炎
胃腸炎とは、胃や腸の粘膜に炎症が起き、嘔吐の他に下痢などの症状が起こることをいいます。
比較的犬によく見られる病気ですが、症状が悪化したり、長引いてしまうと危険な病気です。
胃腸炎の原因は主に、食事性と言われています。
具体的に言えば腐ったもの、食べたことのないフード、脂肪分が多いものを食べると胃腸炎を引き起こします。
また、消化に悪いものを食べた場合にも消化不良を起こし胃腸炎となる可能性もあります。
他にはおもちゃを誤飲した、中毒性のある植物を食べた、細菌やウイルスに感染した、寄生虫が消化管に入った、アレルギーなども考えられます。
胃腸炎には大きく分けて「慢性胃腸炎」と「急性胃腸炎」があります。
慢性の場合は、食欲がない、下痢、嘔吐が長く続き、体重が減少する、元気がなくなるなどの症状が出ます。
急性の場合は、ヨダレが多くなる、嘔吐を繰り返す、吐瀉物に黄色いものや血液が混じっている、便がゆるい、粘液が混じっている、血液が混じっているなどの症状が出ます。
胃腸炎は症状に応じた治療を行います。
整腸剤、胃粘膜保護剤、抗生剤、脱水を起こしているのであれば点滴をする必要があります。
寄生虫などの感染が原因の場合は根本となる寄生虫の駆除を行い、アレルギーが原因の場合には免疫抑制剤を使用し、アレルゲンを含まないフードに変更します。
パルボウイルス腸炎
一般的には、犬パルボウイルス感染症と呼ばれる病気です。
病原ウイルスとなる「パルボウイルス」は比較的新しく発見されたウイルスで、60℃に熱しても1時間は死滅せず、またアルコールやクレゾールなど消毒液なども効かないようです。
感染源は犬の排泄物の中にあるウイルスで、これが口や鼻へ入り次の犬へと感染していきます。
激しい嘔吐や下痢などの症状を伴い、感染した犬のうち発病するのは20%以下ですが、死亡率は1~5%と言われる怖いウイルスです。
感染すると2日後から、下痢や嘔吐以外にも元気がない、衰弱する、食欲がないなどの症状が現れます。
犬の体内に入ったウイルスを殺す治療法がないため根本治療ではなく対処療法や補助療法が行われます。
脱水症状を引き起こしているのであれば点滴を、腸内細菌が異常に繁殖しているのであれば抗生物質を投薬します。
また下痢を止めるための薬剤、嘔吐を止めるための薬剤を投与しウイルスが体の中から出ていくのを待ちます。
死亡率が高くとても怖い病気ですが、パルボウイルスは7種混合ワクチンの中に組み込まれており予防することが可能です。
特に免疫力の弱い子犬やシニア犬には7種混合ワクチンを打ったほうが安心です。
大腸炎
大腸炎は何らかの原因により大腸に炎症が起こり、さまざまな症状を引き起こす消化器系の病気です。
大腸は、盲腸、結腸、直腸から形成されている臓器で、上記でも説明したパルボウイルスの感染や鞭虫などの寄生虫、腫瘍またはポリープ、アレルギー、おもちゃなどの誤飲、ストレス、その他特定の病気が原因により発症します。
大腸性の場合の下痢は1回あたりの量が少なく回数が多いというのが特徴です。
また、排泄する時に痛みを伴うため便をしようとしても渋ってしまうというような症状が出ます。
下痢をした時には粘液や血液が混じった便が出て、症状が重症化すると大腸から出血し血便にさらに鮮血が混じるようになります。
大腸炎の基本的な治療は、腸の粘膜保護剤や下痢止めを使用します。
脱水を起こしている場合には点滴などが必要になります。
また、腸をできるだけ休ませるために半日~1日ほど絶食させることもあるようです。
主に5歳未満の犬によく見られる病気で、普段は元気なのだけれどもときどき粘膜混じりの便が出るという場合は「分泌性大腸炎」の可能性があります。
粘膜混じりの便でも硬さがある程度保たれているのであれば、深刻な問題ではありませんが、そういった場合は脂肪分を減らしたフードに切り替えるようにしましょう。
対処法
動物病院へ急行
愛犬が「吐き出し」ではなく、「嘔吐」をした場合には、吐瀉物や回数を確認して、できるだけ早く動物病院へ行くようにしましょう。
愛犬が元気そうにしているから大丈夫かもと様子見をして放置してしまうと、脱水症状を起こしたりと事態が悪化することがあります。
できるだけ慌てずに対処する必要がありますが、嘔吐以外にも下痢や元気がないなどの症状が出た場合には様子見をしている暇はありません。
もし、多頭飼育をしているのあれば他の犬たちにも同じような症状が出ていないかを確認し、出ていないのであれば下痢や嘔吐をした犬だけ隔離するようにしましょう。
嘔吐の原因が感染症の場合は、犬が排泄したものから他の犬に感染してしまう可能性があります。
そのため、排泄物は他の犬たちには絶対に触らせないようにしましょう。
また、動物病院へ行く前に「いつ嘔吐したのか(食後どれくらいの時間が経っているのか)」「何回嘔吐したのか」「嘔吐の他に普段とは違う症状があるのか」などを把握するようにしましょう。
そして、吐瀉物や便などの排泄物はできる限り病院へ一緒に持っていくようにしましょう。
実際に言葉で説明するよりも実物を獣医師に見てもらった方が比較的早く病気の特定へと繋がります。
応急処置・薬
吐瀉物に粘液や血液が混じっているかを確認します。
また嘔吐以外の症状があるのかをしっかり確認するようにしましょう。
例えば乾いたような咳をしていたり、ヨダレが多く出ているのであれば誤飲や異物が詰まっている可能性があります。
すぐに動物病院へ連れて行く必要がありますが、どうしても行けない場合には絶食させることが必要となります。
基本的に水もあまりよくないのですが、何度も下痢や嘔吐を繰り返している場合には脱水症状を起こしてしまうこともあるため、その場合は水を与えるようにしましょう。
異物を誤飲したなど原因が特定できて、犬が元気にしているようであれば、その後便や吐き出したものにしっかりと異物が出ているかを確認するようにしましょう。
チワワやポメラニアン、トイプードル、フレンチブルドッグ、パクなど「短頭種」と言われる犬種の犬は他の犬種よりも吐きやすいと言われています。
そのため他の犬種以上に吐く症状に気を配る必要があります。
また、愛犬が車に酔いやすい場合には吐き気止め剤を用意しておくと良いでしょう。
ぽちたま薬局というペットのお薬を扱うサイトで「セレニア」というお薬があります。
このお薬は、犬用の制嘔吐薬で、急性嘔吐や乗り物酔いによる嘔吐を抑制するのに効果的です。
アメリカやヨーロッパでは広く使用されているお薬です。
このサイトでは他にも、普段から消化器系の弱い犬向けのサプリメントも販売しています。
「デジトンドロップス」というサプリメントは天然ハーブで作られている液状のサプリメントで、消化不良や胃腸障害の調整とサポートに効果的です。
小型犬の場合は1日5~8滴、大型犬の場合は1日10~15滴ほど与えれば胃腸に関する症状の改善が期待できます。
また、愛犬の嘔吐の原因がストレスからきている場合には、「クロミカルム錠」がおすすめです。
犬猫兼用の補助治療薬で、分離不安やストレス、うつ病、強迫性障害にも効果が期待できます。
このお薬は脳内の意欲に関する神経物質と精神安定に関する物質に働きかけることで犬の精神を安定させ分離不安症などを和らげる効果が期待できます。
治療薬と聞くと心配と思う方は、メンタルヘルスに効くサプリメントもあります。
「ハッピートラベラー」というサプリメントは、天然成分で出来ているサプリメントで犬のストレスや不安を緩和するだけでなく、車酔いにも効果的です。
乗り物酔いで使用する場合は、車に乗る20~30分前に愛犬の体重に合わせて1~3粒与えます。
まとめ
冒頭にも書きましたが、犬は何かと吐く動物です。
愛犬が突然吐き出したり嘔吐してしまったら、飼い主さんとしては心配になりますよね。
でもそこで焦ってしまってはいけないのです。
まず、それが「吐き出し」なのか「嘔吐」なのかを吐瀉物から確認するようにしましょう。
吐き出しであればほとんど消化されてなく、吐き出した物を犬がまた食べてしまうこともあります。
元気な様子であればそれほど心配する必要がなく、もし多頭飼育している方であれば他の犬と競争させるような食べ方をやめる、フードを切り替える時は徐々に切り替える、フードの脂肪分を減らすなどの対処をしましょう。
反対に嘔吐しているのであれば、吐瀉物はほとんど消化されており黄色や赤や茶色の粘膜が混じっていたりすることがあります。
他にも下痢や発熱、食欲不振、元気がないなどの症状が出ることもあります。
その場合には、吐瀉物や便など排泄物を持ってできるだけ早く動物病院へ行くようにしましょう。
原因にもよりますが、吐き出しであればさほど深刻な問題ではありませんが、嘔吐した場合には様子見をせずすぐに対処するようにして下さい。
どんな病気も早期発見、そして早期治療をすることで愛犬の体の負担を抑えたり、治療期間を減らすことにも繋がります。