
マダニはどんな生き物?生態や対処法について
最近、人間への被害も増えている、マダニ。
マダニはその小さな身体で、恐ろしい病気を運びます。
それは時に、寄生された宿主(しゅくしゅ)の命を奪うほど。
マダニの生態を理解し、万全の対策をして、犬・猫を守りましょう。
01マダニとは
マダニは、ダニの中でも特に危ない種類のダニです。
一体どんな生き物なのか?
その生態を見ていきましょう。
マダニはクモの仲間

マダニは、簡単に言うとクモの仲間です。
8本の足を持ち、動物の血をエサとして生きています。
ノミと違って、昆虫ではありません。
ダニの中でも、特に危険な「マダニ」。
マダニの体長は3~4mmですが、吸血後は3~4倍もの大きさに膨れます。
マダニの被害は3月ごろから出始めます。
特に、ピークは9月~11月。
しかし冬の暖かい部屋はマダニにとって快適な環境です。
そのため、室内のマダニに季節はあまり関係ありません。
1年中気を付ける必要があります。
また、マダニは吸血するだけでなく、感染症を運びます。
マダニの吸血による皮膚炎や貧血、致死性の高い感染症…
これらを防ぐために、予防が欠かせないのです。
マダニは「咬む」
マダニは「咬む」ことにより吸血します。
マダニの吸血
- 口の先についたハサミで皮膚を切り裂く
- セメントのようなものを出して口を皮膚にしっかりと固定する
- 数日~10日かけて吸血する
- 落下して脱皮する
- 寄生する動物を探し、1~4を繰り返す
- 3回目の寄生が終わったら卵を産み、息絶える
マダニの吸血は、生涯で3回のみと言われています。
吸血が終わるごとに宿主から落ちて、また新しい宿主を探すのです。
マダニが吸血しているのを見つけても、無理にとってはいけません。
仮に身体が取れても、口の部分だけ残って皮膚が化膿してしまう場合があるためです。
(化膿:細菌によって傷口が膿をもつこと)
犬・猫にマダニがついていたら、早めに動物病院へ行きましょう。
また、マダニは2000~3000個の卵を産んで生涯を終えます。
とんでもない数の卵を産むため、マダニの予防・駆除は抜かりなく行いましょう。
02マダニが発生する原因・場所

マダニは、主に山や川などにいます。
「あんまり行かないから大丈夫そう」?
実は、マダニがいるのは山・川だけではありません。
では一体、どこにいるの?
どこから発生するの?
見つけ方はあるの?
そんな部分をご説明します。
マダニは都市部にもいる!
マダニは、山・川だけでなく、実は都市部にもいます。
散歩道の草むらや公園など、意外とどこにでもいるんです。
マダニの主なエサは、動物の血液。
吸血しないと死んでしまうのです。
そのため、マダニは寄生するチャンスを常にうかがっています。
そんな状態のマダニが、どこにでもいると考えてみてください。
…気を付けないと大変なことになりますね。
お散歩帰りにはペットにマダニが付いていないか必ずチェックしましょう。
マダニは外からついてくる!?
マダニが発生する1番の原因は、お散歩帰りに連れてきてしまうことです。
基本的にマダニは外で暮らす生き物。
しかし寄生した動物が建物の中で暮らしているなら、当然ついてきます。
そこで2~3週間の間に2000~3000個の卵を産みます。
一瞬にしてマダニ・パンデミックです。
家に入る前は、マダニチェックを入念に行いましょう。
マダニは「うつる」
マダニはうつります。
マダニは成長の過程で吸血するごとに宿主を離れ、新しい宿主に寄生します。
さらにメスは死ぬ前に2000~3000個の卵を産むため、一気に繁殖するのです。
1匹でもマダニが家の中にいたら、放っておくと広がります。
特に犬・猫両方いる場合、うつし合うこともあるため危険です。
マダニは絶対に連れ込まないようにしましょう。
マダニの見つけ方
マダニを見つけるには、ブラッシングして注意深く観察しましょう。
頭や耳、目の縁やお腹、足の指の間や背中などがマダニに咬まれやすい場所です。
※ノミやマダニの成虫は絶対につぶさないでください。
卵が飛び散る可能性があります。
もしマダニがすでにしっかり咬みついている状態の場合は、無理に取ってはいけません。
マダニの口だけ残ると皮膚が化膿(かのう)してしまうためです。
(化膿:細菌によって傷口が膿をもつこと)
マダニがペットに咬みついていたら、速やかに動物病院へ連れていきましょう。
03マダニの症状

マダニに噛まれると、次の症状や病気に繋がります。
症状
- ずっとかいている
- 元気がなくなる
- 食欲がなくなる
病気
- アレルギー性皮膚炎
- 貧血
- 犬バベシア症
- 猫ヘモバルトネラ症
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎は、マダニの唾液に反応して起こるアレルギー反応です。
強いかゆみを引き起こし、精神的にも強いストレスがかかります。
かき傷から細菌が入り込んで別の病気にもつながりやすい、厄介な病気です。
貧血
ダニが大量に寄生すると、それだけ吸血量も多くなるため、貧血を引き起こすことがあります。
特に子犬や子猫は大量の血を吸われるため命に関わります。
血液は栄養を全身に運ぶため、小さな体には血液を失うことは致命的なのです。
感染症
マダニは恐ろしい感染症を運びます。
犬バベシア症
犬バベシア症は、「バベシア」という寄生虫がマダニを通して犬に寄生し、犬の赤血球を破壊していく感染症です。
症状は発熱や貧血ですが、最悪の場合死に至ります。
以前は西日本特有の病気でしたが、現在では犬の移動にともなって全国的にリスクが広がっています。
猫ヘモプラズマ症
猫ヘモプラズマ症は、「ヘモプラズマ」という病原体がマダニを通して猫に寄生し、赤血球を破壊していく感染症です。
症状は貧血、元気や食欲の低下、発熱などで、最悪の場合死に至ります。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
SFTSウイルスを持つマダニに咬まれることで起こる病気が、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。
主な症状は発熱や消化器症状で、致死率は猫で60~70%、犬で29%の感染症です。
感染した犬・猫から人間が感染した事例もあります。
人間も10~30%の致死率と、近年増えている恐ろしい感染症です。
04ペットがマダニに咬まれたら

もしペットがマダニに咬まれたら?
まずは、早急に駆除しましょう。
今まさにペットにマダニがついている方は、早めに動物病院へ連れて行ってください。
また飼い主はこれからずっと、犬や猫をマダニから守っていく義務があります。
おうちで使える駆除薬もチェックしておきましょう。
動物病院へ行く
一見大丈夫そうでも、念のため動物病院で診察を受けましょう。
マダニは恐ろしい感染症を運びます。
知らぬ間にペットが感染している可能性があります。
適切な処置を受けてください。
また、マダニは大量の卵を持っている可能性があります。
そのため、決して潰してはいけません。
自分なりの処置はせず、早めに動物病院へ行きましょう。
マダニの駆除薬を使う
もしおうちにあるなら、駆除薬が有効です。
実際に動物病院では、獣医師が駆除薬を使って対処してくれます。
さらに現在は、定期的な投与で駆除から予防までできる薬が多くあり、便利です。
薬には、こんなメリット・デメリットがあります。
メリット
- 危険な病気からペットを守れる
- 早く対処できる
- 持っていれば病院に連れて行かなくていい
- 月に1回の投与で持続的に駆除・予防ができる
デメリット
- 副作用が起こることがある
- 注意事項を守らないと大変危険である
薬の服用により、副作用が起こる可能性があります。
ノミ・ダニ駆除薬の副作用は、嘔吐、元気喪失、下痢などが特に多いものです。
それでも薬を使うのは、確かな効果があるから。
マダニは命に関わる病気を運ぶ恐ろしい生き物です。
犬や猫を守るため、予防や駆除は徹底しましょう。
副作用や最悪の事態を避けるため、薬を使う時は以下のことを絶対に守ってください。
- 用法・用量を守る
- 使用期限を過ぎたものは使わない
- 年齢制限を守る
- その他注意事項をしっかり確認する
上記を守っても副作用が出た際は、よく観察しておくことが大切です。
獣医師に以下のことを伝えられるようにしておきましょう。
- いつどんな薬を服用したか
- 服用してからどれくらいの時間で症状が出たか
- どんな様子か
発作などの場合は、動画の撮影をすると獣医師に伝えやすくなります。
05マダニの予防

マダニを予防するには、以下の3つが効果的です。
- 予防薬を使う
- きれいな環境を作る
- 帰宅時にチェックする
詳しく見ていきましょう。
予防薬を使う
マダニの予防薬は、厳密に言うと予防・駆除兼用の薬がほとんどです。
定期的な投与で、予防も駆除もできます。
ノミやマダニは1匹ついてしまうと完全に退治するのが難しい生き物です。
犬・猫の身体に住み着かせないように、ついてしまったらすぐに駆除するようにしましょう。
薬には飲み薬やスポットタイプなど種類があるため、ペットに合わせて選んでください。
また、肌が弱く薬を使うのが心配な犬・猫は、薬を使わないでノミを予防する方法を活用しましょう。
きれいな環境を作る
ほこりや食べ物のカスなど、マダニのエサになるものはなくしましょう。
きれいにしていたら、マダニの元気がなくなります。
マダニ予防には、まずお掃除が大切です。
帰宅時にチェックする
マダニを持ち帰りやすいのは、特に草むらや山などに入った後。
これは、マダニが近くを通りがかった動物を狙って寄生するためです。
お散歩帰りには、家に入る前にペットの身体を念入りにチェックしてください。
被毛を歩いているマダニは取りましょう。
対策しておらず、すでにマダニが咬みついている場合は動物病院へ行ってください。